東雲政策研究会
団体設立宣言
戦後、焦土と化した祖国日本を、先人たちは懸命に働き、短期間で驚異的な復興を成し遂げた。終戦から10年目にしてGDP(国内総生産)は戦前の水準を上回り、政府は翌年の経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言した。昭和29年12月から31ヶ月続いた経済拡大は、建国以来、例を見ない好景気という意味で神武景気と呼ばれ、日本を戦後復興期から高度成長期へと導いた。
洋風の集合住宅や電化製品の普及、都市の拡大、情報伝達の発展は、家庭生活の向上や経済成長、社会の進化に寄与し、国民は経済成長の恩恵を受け、個人の所得や生活水準が向上し、教育の普及や情報化の進展によって、個人の自由な意思決定や行動が促進された。それと同時に日本の社会には個人主義が台頭し、社会構造や価値観に大きな変化が生じ始めた。家族間においても個人化と私事化が顕著になり、個人主義的な価値観が蔓延し始めた。
その後に向かえた数度の大型景気成長期により、日本は世界有数の経済大国になり、国民は更なる経済的恩恵を享受したが、平成初期のバブル崩壊によって、日本の経済は長期的な低迷期に入った。その結果、企業の雇用や社会保障制度が不安定化し、個人はより自立した生き方を求めるようになった。また、グローバル化の進展によって、個人の価値観や生き方の選択肢が広がった。現代の日本では、個人主義はより一層浸透し、結婚や出産、子育てなどの生活様式や、仕事に対する価値観、政治や社会問題に対する意識などにおいて、個人の選択が重視されるようになってきた。
個人主義の台頭は、日本の社会に多くのメリットをもたらしたが、行き過ぎた個人主義は家族を崩壊させた。家族の絆は、互いに深く関わり合い信頼しあい、助け合うことで育まれる。しかし、個人の集まりとなった家族は、絆は育まれず、相手の立場に立ち気持ちに寄り添うのは難しく、些細な問題でも怒りや憎しみなどの感情が抑えきれなくなり、取り返しのつかない結末を迎えてしまうこともある。現在、日本で起こる殺人の半数は家族間で起きている。
絆が失われた家族は、さまざまな問題に直面し、やがて崩壊し、貧困のひとり親家庭に転じる可能性がある。令和5年の厚生労働省の発表によると、子供の相対的貧困率は、18歳未満の人口において11.5%で、ひとり親世帯では貧困率が44.5%に達している。貧困家庭の子供は、食事が十分に摂れなかったり、教材や部活動の費用を捻出できずに学習や体験の機会を失ったりすることが少なくない。また、貧困が原因で塾や習い事など、学校以外で学習する機会が少ないことにより教育格差が生まれている。子供たちには、健康的な食事と十分な教育を受ける権利がある。我々が子供たちから困難や苦痛を除去し、希望を持って未来を生きられるようにすることにより貧困の連鎖を生み出さないようにするのは、将来世代に対する責務である。
今を生きている我々の本旨は、一人一人が次の世代を紡ぐ糸となり、課題を解決し、文化を継承し、誇りある祖国を築くことである。
今、東の空が茜色に染まり出した。闇から再び光が、空を染めていく。我々はこの東雲の光を遮る勢力又は思想に一歩も退かずに立ち向かうことをここに誓う。
令和五年十一月三日
東雲政策研究会